8.31.2020

project オクト No3 ヴァイオリンのデザインとは

 
 マンハッタンにも秋の匂いがうっすらと混じってきました。夕暮れに文章を書くことがほとんどないのですが、なんとなく気分がいいので少し過去の思い出をと思ったところ、意外にも常に今が充実しているのでいい思い出に浸ることもできないヴァイオリン作家、永石勇人です。

 ヴァイオリン制作というデザイン

 弓弦楽器のカテゴライズと形の関係を考えていまして、ヴィオール族、ヴァイオリン族、リラ族といろいろあって、、、調弦によるところが大きくあるように感じました。まず、形を決めるときにストラディヴァリモデルとかグァルネリモデルと呼んでいるのはヴァイオリンが工場(みたいなミルクールとか)で量産されるようになってからの話で、本来の楽器製作道からはずれたいわゆるコピーのはじまりですね。←今風の楽器職人のあけぼの、ネットができてからますますフラット化が進んでいて世界中のみんなが同じヴァイオリンを作るようになってしまったね

 ハッチンスでさえ、まずストラディヴァリを基準に考えているのですが、元はアンドレア・アマーティ(クレモナ、イタリア 1505-1577)の工法、デザインにしたがったことになりますよね。基本的には4弦の五度調弦が大々前提にありまして、このデザインそのものがアマーティが作ったものといえるでしょう。小生はここにアンドレア・アマーティの凄さがあり、後500年にわたってコピーされ続けたデザインのオリジナルにリスペクトを感じます。←アマーティが元祖になった理由は良い弟子とアピール力(どうやらフランス国王に送ったのはアマーティ側らしい説)


 フランソワ・デニ(スランス、The Traité de Lutherie著者)によるとアマーティは初めて幾何学的にヴァイオリンリン族をデザインした人物であるとのことです。これは試行錯誤で作品を作ったことを思わせるなんとも元祖らしい話で気に入っています。強い意志と想いで作られたものは文化を生む可能性を十分に秘めていることを感じさせますね。
 下の図はアメリカのマスタークラス、オーバリンの友人ハリー教授がデニのデザインをもとにプログラム出力したものです。これ、意外に便利です。




 さらにその中にも、小生は良し悪しで測れない強い文化と弱い文化があると考えていまして、イタリアはその奇抜さと強引さからの強い文化を多く生み出しています。その昔、イタリアの友人がピッツァを国外に持っていき口に押し込む文化なんて言ってましたが、すこしイタイけど納得できる話です(ピッツァは原価率、再現性、インパクトがいい)。ヴァイオリンという楽器の文化もそのコンセプト、デザインから強い文化でして、ソプラノ部を受け持つヴァイオリンの音域と情圧の表現力の高さは弦楽器特有の説得力ですね。そして、楽器の中では製作が比較的に簡単、材料はなんと木材。そんなヴァイオリンのイラストにせよ写真にせよアイコンとしての機能を持っているものすべてはアマティのデザインである強い文化というところでしょう。
 一つの機能を持った一つのデザインがこれだけ長期間使われ続けているのにも驚きですが、それがフィレンツェやパリやニューヨークのアーティストでなく田舎町の一人の職人によって生み出されたところも特筆するところでしょう。厳密には前後に似たような発明があるので突然変異で現れたものではありませんが。。。まえにマンガキャラクターに必要な特性にシルエットでわかるキャラの濃さが重要とききました。まさにこれだな〜っと。 




 と、だらだら書いてしまいましたが、要するにアマーティ工法を用いての制作ですということです。。。

工房より愛をこめて
永石勇人