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6.23.2023

黒いヴァイオリン その1

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

 それはイタリアに来て1年目に知り合った不思議な友人が教えてくれたことでした。
日本人の彼はイタリア語がすでに堪能で、休憩中にイタリア語でかかれた本を読んでいました。

 『一冊読むとイタリア語かなりレベルアップしますよ』となにげなく言われたので感化された小生は早速、同じ本を買ってよむことになりました。。イタリア語はもちろん難しく。。1ページ一時間のペース。ただ、この黒い表紙が好きで持っているだけで嬉しかったものです。

 イタリア語で”Il violino nero”(イル ヴィオリーノ ネーロ).
Maxence Fermine(マクサンス・フェルミーヌ)の黒いヴァイオリンでです。






 元の”Le Violon noir”は日本語訳はありませんが”蜜蜂職人”は田中 倫郎さんの翻訳ででています。

小生もまだ読んではいませんがイタリアでは”Neige”(雪)がよく読まれているようです。

8.25.2017

ライニング接着


haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

横板が全てつくと、f字孔から覗くと見えるライニングを接着します。
全ての楽器の表裏面の両方につけるので…全部で12本!
改めて考えると多いです。




今日のクレモナは日中、粉雪が舞いました。
冬真っ盛り、春が待ち遠しいです。

1.15.2017

横板 〜仮終了〜

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

手前3つはアマティのクァルテット。
奥はストラディヴァリモデルのヴァイオリン。
横板の内側にライニングを接着し、一段落…。
ここから表裏板やネックへ移行できます。


横板とライニングで楽器のアウトラインが決まるので、しっかり高精度で仕上げます。

1.14.2017

平面出し

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

どの楽器にも必ず表裏板があります。
平面出しは基本的な作業の一つです。
先日ヴァイオリン3台とヴィオラ1台分の横板を曲げ終えたので…
表裏合わせて8枚ほど平にします。




チェロは?…3台分置いてあります。
1枚づつ順番に、正確に、手際よく!

1.10.2017

横板接着時〜part2〜

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

型を回転させ次々と接着…。
ヴァイオリン、ヴィオラは片手でまわせますがチェロになると型の重さ+クランプでどんどん重たくなっていきます。



今年のクレモナの冬は例年より冷え込むためニカワの接着時は
電気ストーブをつけて少しでも室温を上げます。

1.09.2017

横板接着時…

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ…横板の接着には多くのクランプを使います。
同じ作業はできるだけ同時期に進めます。
しかし残念ながら全てを一緒に接着するほどクランプがないため、
ひとつづつ順番に・・・。




手前の2つと奥の型、どれもちょっとずつ違いますね。

1.06.2017

自家製ニス

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

楽器に塗るニスも工房で作ります。
材料、レシピは秘密です…。
門外不出!?
これがニスのベースとなります。



この写真だけ見ても、ヴァイオリンやチェロに塗られるのは想像しにくいですね…。

1.05.2017

グァダニーニとアマティのヴァイオリン、ヴィオラ

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

チェロと同時にヴァイオリン、ヴィオラにも精を出します。

Forma interna「内型」の長所は横板と表裏板のラインがスッキリきれいに出て仕上がりに大きく影響する点です。





ちなみに型は全部で7個作業台にのっています♪

顔料をすり潰す

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ


ニス部屋では…
手作り顔料は、乾かした後乳鉢でよくすり潰します。
当然ながら時間によって細かさも変わります。
この後ガラス板の上でガラス製の練り棒を使いさらに細かくします。
チェロを塗るにはかなりの量の顔料が必要になります。
クァルテットとなると…。




楽器本体だけでなく、色を用意するのにも時間がかかります。

1.02.2017

チェロの横板

haja&Chi 
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

横板の中でもカーヴの連続からなるC部分。
曲げた後すぐには接着しません。
板が戻りますからしばし固定…。






カーブを直して、明日接着です。

1.01.2017

謹賀新年

haja&Chi 
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
2017年1月1日 クレモナ



今年も飛ばしていきます!まずはチェロから。

8.16.2016

Stradivarius Quartetto(two violins, a viola and the cello)

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ


 ハイドンに始まる音楽の形式、弦楽四重奏。
これにちなんでヴァイオリン属にも四重奏なる物が存在します。

 この度、四重奏を製作する機会を頂きましてストラディヴァリ・クアルテットにいたしました。知名度が高く王道であり基本でるストラディヴァリがゆえに、最も難しく手の抜けないモデルになります。

普通はヴァイオリン2本にヴィオラ1、チェロ1になります。

 材料となるスプルース、メープルは基本、同じ木からとるのが通例で、4本いっしょに作業を進めて行きます。ニスもおなじ物を同じ時期に塗るのがポイントでカラーや雰囲気がにてきます。

 音には特にその特徴がききとれます。
今回も隆起の形状や厚みの分布などヴァイオリン2本は同じにし、ヴィオラはチェロよりに調整。チェロは柔らかめの音にしました。
 4本の音が綺麗に揃うのがいいという簡単な答えではありません。
それぞれの個性が活きて、お互いに競合していくのがいいのかなと思います。
 4本一緒に成長し続けたらこれは大変嬉しい事です。
大事に使って頂きたいです。

 2016年に製作完了し納品いたしました。数年後四重奏で聴ける機会があればその成長もみれるのでしょう。楽しみです。

 ファースト・ヴァイオリン

ストラディヴァリのPパターンです。
若干細身のストラディヴァリ黄金期にも生産されていた形です。






 ヘッドの黒ぶちはストラディヴァリ、グァルネリ、ベルゴンツィ、グァダニーニに見られるキャラクターで当時流行っていた装飾です。
柔らかい雰囲気のアマティ系の楽器から変化を経て、当時指板も黒檀ばり、ペグも黒く塗られるものも見られるようになります。楽器全体のカラーが赤や茶色+黒になっていきます。






 裏板のメープルはスロベニア材です。
杢が強いのですが、重くなく扱いやすい材料でした。






3.28.2016

続々々々・クレモナからトレントに〜住み込みヴァイオリン制作〜

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

2016年

トレントにて製作したヴァイオリンの完成です。


小生はミラノで数本ヴァイオリンを仕上げていますが、トレントにて製作したのはこの作品のみです。



ストラディヴァリ・パターンの一枚板 


 隆起から、厚みにいたるまですべてルカのコンセプトのもと作られました。もちろんニスもそれ以上に仕上げています。
 希望があったのでプリモンの楽器にはない黒の縁取りがほどこされてあります。







 クレモナの楽器とはディティールで音も造りも一味違っています。
 これからどのように弾かれて成長するかが楽しみです。

永石勇人


 

12.18.2015

黒いヴァイオリン その3

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ


 黒檀で作った黒いヴァイオリンの製作です。

 1677年のストラディヴァリ”sunrise”よりストラド初期の細身のモデルです。あまりにも有名ですの説明もいらないですね。
 反してこれは真っ黒にて、さしずめ”sun set”とでも呼べましょうか。

 オリジナルの横板とヘッドの装飾は溝にstuccoと呼ばれるパテが埋めてありまして、最近の研究にて黒く染めた木の粉をのりと一緒にまぜたものを使っていたことがわかっています。表板と裏板の白い部分は象牙又は骨です。

 
 さて、今回は黒檀に生えるラインという事であれこれ考えた結果、アルミニウムの粉を使用する事にいたしました。銀は酸化して黒くなってしまうので残念ながら使えません。

 材料となる黒檀は一つの大きな板を探し出してきまして、全てのパーツを同じ木からとれるようにしました。いまでもヴァイオリンもう1本分がとってあります。



fingerboard以外は全て同じ縞黒檀
マダガスカルの材です



さて、デザインの準備。
もちろんコピペではなく、描き直して整えます。




トレース用に切り抜かれる
ストラド工房でも紙上のドットによる写しでほぼ方法は一緒



横板は、杢がないために普通の楓と同じ厚みで曲げる事ができました。



黒檀の板の厚み出し。。一枚終わるとカンナを研ぎ直し。


永石勇人


 

12.11.2015

続・クレモナからトレントに〜住み込みヴァイオリン制作〜

 haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

トレント生活は続きます。

 工房は8時30分よりスタートの5時30分終わり。昼休みは1時間ですが、残業は自由。

 毎朝、スタートまでには工房をきっちり整えておかないとなりません。身支度と工房の掃除。さらに朝食まですませます。

 近所に3つBARがあり大変お世話になりました。中でも老人ホームの向かいのBARのコーヒーはとても美味しく、ルンゴでオーダーしても濃厚なイタリアン・エスプレッソ。もちろんクロワッサンは近所のパスティッチェリアからの毎朝配達される焼きたてにてガッカリすることはありませんでした。



イタリアには他の町にもメーカーがいます
今のクレモナだけが後世に評価されるとは限らない


 工房内では作業に入ると夢中のルカ・プリモン。チェロの隆起を作っています。慣れた手つきで表板を削っています。作業中は部屋には入りにくいもの・・声をかける時もタイミングを見計らってのシャッターです。

 
OFFの時とは真逆で、堪能なイタリア語も話さずに集中・・


 工房で修行をしているウンバーさん。クレモナの学校出身でトレントに住んで通っているとのこと。。初チェロを始めていた様子です。

 小生の作業は荒削りです、慣れた作業ですのでこれは半日でおわります。



内側の荒けずり
朝から晩まで1年中楽器を作っています
この作業は手慣れたものです

12.05.2015

クレモナからトレントに〜住み込みヴァイオリン制作〜

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ


 霧も濃くなるイタリア、クレモナですが11月より合宿をしています。
 ミラノの学生時代にお世話になったルカ・プリモンと10年ぶりに作業をします。
 ヴァイオリンをつくります。もちろん彼のコンセプトをベースに一本仕上げます。

ヴァイオリンの各材料、工具、
生活用品をもっての移動


 2015年、春の予定でした。しかし小生もコンクールの楽器を仕上げるために、夏はやはり時間が合わずこの冬までずれ込んでしまいました。

 楽器作りには答えがないためか自然と疑問がわいてきます。方向も様々です。
 学校時代に習ったことが今も通用するのか、勘違いして呑み込んでいた事、またルカがこの10年何を見てきたのか・・さまざまなことを確かめにきました。

 完全な住み込みです。工房は広めですのでベッドも用意してもらいました。


夜には作業台をずらしてベッドの用意


 朝から夜までフルタイムのヴァイオリンづくりです。


幸運な事に、この時期トレントの町は毎日快晴です。環境の良い中、また一つ腕に磨きをかけたいと思っています。



永石勇人

11.21.2015

バロックヴァイオリン 04 指板

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

誰かがいった。。
楽器は軽い方がいい・・・

 最近の研究でもオールドイタリアの木材は密度が低いと。


 しかし、いつからでしょうかヴァイオリンにアゴあてをつけて。。身体をこわした巨匠が肩当てを開発して。。鉄弦になったためにアジャスターをつけて。。。巻き線で指板が凹むために削れるように指板を全部黒檀にかえて・・

 ヴァイオリンは歴史的に一度も軽くなったことなどありません。
そう、誕生したときが一番かるかったのです。
もちろん音がちがいます。音も軽くなります。明るくなります。

 バロック後期までの指板は比較的短く、目安として弦長の3分2から4分3ぐらいです。
  そして指板自体かなり軽いです。



メディチ家の絵画 当時としては長めの指板
描かれた年代からアマティのヴァイオリンの可能性も・・

 もとの指板はどこに?といいますと19世紀に残っていたオリジナルの指板ですら交換されてしまいました。
 今はどれも各国の博物館でのみみることができます。

 
あらたに作ったヴァイオリンの指板
2mm厚の黒檀が熱で曲げられて接着される

 当時から使用頻度の少なかった、テノール・ヴィオラ、ポシェット、5弦チェロ、ヴィオリーノ・ピッコロ、装飾楽器にはオリジナルの指板がそのまま残っていることも多く大変貴重な資料です。300年以上前の木工製品ですから本当に珍しいものです。


 
アマティの2代目。Antonius&Hieronymus Amatiのオリジナル指板


 作り方は色々なパターンがありました。クレモナのなかだけでも年代、楽器のオーダー元?によって作り分けていたようです。
 とにかく中を柳、フルーツの木で作るのが一般的で今の指板に比べて30%以上かるくなります。楽器の重心がかなり手前にくるので持ってみると予想以上に軽く感じるはずです。


小生が気に入っているスタイル
側面にメイプルを張り合わせたスプルースに黒檀を貼付ける。
4つの木からなる指板。軽くそして、意外に強い。

永石勇人

9.09.2015

黒いヴァイオリン その2

haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ
1年後・・・

 ミラノに通学の途中に車中で友達としゃべっているさなか”黒いヴァイオリン”で話しが弾みました。
 
考えごとの3上とはよくいったものです。
ひらめきの馬上。

冗談を本気でカタチにするために次の週から制作にかかりました。



 完成はこの半年後。フル黒檀ボディーのヴァイオリンです。


黒檀でできた黒いヴァイオリン
ストラディヴァリの“sun rise“のブラック・スペシャル

 
小生、23才のときに生み出した習作です。



 永石勇人 haja&Chi

7.23.2015

バロックヴァイオリン 03 ガット弦


haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ


ヴァイオリンのガット弦 17世紀末のパターン
G線が銀巻 E、A、Dはアリエス(牡羊)ガット
 バロックヴァイオリンは言うまでもなく、ガット弦が張られていました。

 ガット弦とは羊や牛の腸の皮を絞って乾燥させた紐です。詳しいことはググるとすぐに出てくるとは思いますが、、ようするに天然のものです。



 もちろん金属弦(コアが一本の金属)は16世紀以前より存在しましたが20世紀のはじめまであえてヴァイオリニストたちはガットを選んできました。カザルス、ハイフェッツしかりです・・
 チャイコフスキー、メンデルスゾーン、ドヴォルジャーク、パガニーニ・・クラッシックファンを魅了する19世紀の作曲家はもちろんガット弦を想定して作曲しています。
 音楽家の意図を読み取る大前提にガットの音はあるような気がします。。




 小生のバロック楽器にはもちろんオリジナルにより近いガットを使用しています。
今回のピリオド・ヴァイオリンはイタリアのトーロ(toro)社のものを使用しました。
 ここには言うまでもなくオリジナルのイタリア弦づくりが生きているためです。
 厳密には、一部モロッコから仕入れている物もあるようですが・・・
 (モロッコはガット弦の生産で有名。アラブの民族楽器によく使われ、家畜もたくさんいるそうな。。近年イタリア弦のブランド力が再認識され始めたのでヨーロッパのアウトソージング先がイタリアからモロッコなどの国に移っているとのお話。)
 余談ではありますが、アメリカのダッダリオ、ドイツのピラストロも元はイタリアからの移民が立ち上げた会社でルネッサンス、バロック期に栄えた弦メーカーの末裔です。。




 ガット巻き線(コアがガットに金属の巻)はヴァイオリンでG線、ヴィオラで(G)C線、チェロでGC線で使われ、、当時精製可能な重金属、銅と銀が使われました。ニッケルは1751年、タングステンは1783年、アルミニウムは1825年にようやく単離されたようで、これらのレアメタルが弦になるのは150年以上後の事になります。



コントラバスなどの太い弦は牛の腸で作られることがほとんど
この弦一本で30本以上の腸がよられている
これは漂白されていないもの・・・ビーフジャーキーのような匂いもします。


 ニスコーティング、縒り方などの組み合わせで色々なヴァリエーションができますが、一番重要なのは素材の質、つまりどの腸、さらには腸のどの部位を使うかだったようです。動物の種類から産地までまるで今の食品のような選定のしかたです。。均一でなかったためにヴァイオリニストは店に行き一本いっぽん見て選んでいたそうです。あのパガニーニもこだわりをもっていたらしく、4ストランドのe線を大量に注文し取捨していたとのことです。
 
 現在の機械で巻かれ綺麗にパッケージされた均一のスチール弦、シンテティック弦とは大きく違っていた様子です。