キャリアを積めば積むほど、楽器職人とはなんだろうとつくづく考えてしまっています。霧の立ち込める道を早朝に走っている感じです。ヴァイオリンや楽器職人のwiki的なニュアンスがどうもしっくりこなくなってきてしまいました。まだ、道が見えているという意味では進んでいくしかないと思っている楽器作家、永石勇人です。
ハッチンスとオクテット・コンソート
ヴァイオリンの歴史は500年になりますが、数字というモノサシでヴァイオリン族を読み解こうとしたのはここ50~60年のことです。アメリカの科学者ハッチンス(USA 1911-2009)によって名器の共通項を探す意味で、特にヴァイオリン個体それぞれが持つ特性をつかもうというこころみが始まりました。結果も良好でして20世紀のうちに多数のストラディヴァリやグァルネリといった楽器のデータが取られました。ただ、そこから理想とするヴァイオリンの指標をつくってしまったわけでもありまして、、、一概によしとできないと感じています。さらに、これをコンテンポラリーに当てはめ、ミュージシャンのフィードバックを得てビジネスにつなげることに成功。特にアメリカはこれを”こたえ”または”売り”として21世紀になった今でも檀をつくり前に進めています。ヴァイオリン音響研究といえばほぼ、これに似通ったものを指す感じです。
まとめると、”(目標の)ストラドの秘密を研究で探り、(新作で)超える”という題です。これはまぁ、よく聞く(営業)スローガンです。この”秘密”を研究対象として生み出したことがヴァイオリン業界の最大の発明!そしてこれに支えてられているように感じます。
また、感や経験を頼りにする職人の立場から、”科学的”という言葉は逆に魔法に聞こえるため、信者を増やし後世に大きな影響をあたえました。もちろんその魔法は今でも更新され大いに楽器製作に活用できるものであります。実際、小生はステッキをふりまくっている魔法使いです。
続く・・
永石勇人 ニューヨーク