8.24.2020

project オクト No.2  新たなヴァイオリン族 クリエイターとしてのハッチンス


haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ

 ニューヨークの工房で早朝出勤して書いています。
朝のミッドタウンは静けさが心地よく、朝食、雑務(簡単な修理の接着、リタッチ)もここですませてしまいます。30歳超えてから朝方なんだなっ、と気付いてきたヴァイオリン作家、永石勇人です。


続き

しかしながら、明らかにハッチンスがした最高の仕事はこれではなく、小生が最も興味を惹かれリスペクトするものは、彼女(ハッチンス)が生み出した作品→ハッチンス・コンソートと呼ばれる8本からなるヴァイオリン族楽器郡です。オクテットと呼ぶのが好きです。。。
これを実験的作品と取るか、傑作品と取るかは、視点や価値観によると思います。
 作品のコンセプトは、既存のヴァイオリンをベースに各音域に合わせて5度調弦の楽器を音響的考察を含めリデザインするもので、小生はフランス人(ヴィヨームとか)やイギリス人(ヒルとか)もできなかった革命のように感じています。もちろん、エレキ楽器の登場のインパクトには負けていますが。。
 クアルテットでヴィオラの立ち位置が議論されることがありますが、オクテットでは全ての楽器の音域が3分の2づつ重なる異様な世界観をつくります。かつてヴィオラ・テノーレとコントラアルトが共存したような同じ音域であっても”音質”の違いを作り出す試みににています。ここに興味をそそられます。


 現在ではヴァイオリン族は固定されその範疇での表現、技術を楽しむ芸術が一般的ですが、限界もきています。この異質な音響体が音楽の幅を増やせるなら楽しいじゃないですか。何も油絵を書くのに丸筆だけが表現方法ではないということで。。演奏には練習がひつようですが、もちろん先生は存在しません。
 実際に、作って弾いて長所、短所いろいろ見えてくることでしょう。そのクセを生かした新しい音楽体験が経験できればと考えています。音楽家の可能性、活動が広がる可能性にあふれています。

 とにかく、20世紀には多くの楽器が生まれましたが、いまだにこの楽器郡の認知があまいのが歯痒く、これを紹介すべく製作を開始いたしました。プロジェクトは数年計画でヴァカンス、休日を利用して製作しています。本業のヴィオリン、チェロ製作、オールド楽器の修理の合間に製作するのでかなりスローではありますが完成はさせるので、ぜひフォローしてください。


 このプロジェクトは友人の楽器職人の大月さんと一緒に進めています。上の写真はクレモナ大聖堂の前で、夏のヴァカンスでイタリアを満喫しているaround 50'風の大月さん。8本あるので、二人で一緒につくれば早いでしょ、という考えです。一人での自己満より共有して喜びたい思いでコラボしています。小生にはステージで弾かれてるイメージがすでにあります。あとは早く音を聞きたいだけですね。皆さんと、オクテットの音をシェアできる日が待ち遠しいです。

永石勇人