haja&Chi
イタリア ヴァイオリン チェロ 作家
永石勇人 清水ちひろ
2013年も秋になり、ようやくヴィオラプロジェクトも姿を現してきました。
始めに仕上がりましたのは、モダンヴィオラのアルマンニ装飾です。
haja face in Cremona 2013 |
アルマンニ装飾とは・・
アルマンニ派の楽器に見られる象眼装飾です。アルマンニと呼ばれる流派は南ドイツのシュヴァルツヴァルト(黒い森)で知られるバーデン=ヴュルテンベルク州で生まれ、スイス、オーストリアにその一部が渡ったようです。
17世紀の後半にドイツの流れ(もちろんブレッシャ経由)を汲んで発展したこの流派は楽器の構造がバロック時代以前のヴァイオリ族を彷彿させます。同時期のヴァイオリンにまでよく見られる古典ドイツの工法に似ており16世紀クレモナに端を発し現代のスタンダードになったイタリア工法とは大きく異なります。
大きく咲いた装飾象眼 |
その後、どのような理由で広がっていったかは定かではないにしろバーゼルに近い事、ハンス・クロフダラーはベルン近郊で作品を残している事などからこの地域(北部スイス)の音楽と密接に関係したと思われます。ただ、スクールの一人ストッペルはラベルにウィーンと記しています。
実際のところ装飾のみの復刻版ですがヨセフ・メイヤーの象眼をベースに染色ではない様々な種類の木片を使用しカラフルなデザインとしました。
象眼に使用した材:
赤▶グラナディッリョ 茶▶ウォールナット、スネークウッド 黄▶西洋ツゲ 緑▶グリーンオーク
またフィッティング(指板、テールピース、チンレスト)には茶色の月桂樹、ペグには焼かずの西洋ツゲをそのまま使い黄色にしました。
楽器全体を柔らかく仕上げるために黒い木(染色材、黒檀)を使わずにパーフリングも楓とウォールナットであつらえました。2重にはいったパーフリングは全ての箇所で互い違いに編まれているかのように入れられ四隅のハートで繋がります。
気の遠くなる様な埋め込みでは全てのピースがニカワによって接着され、象眼であるためにニスははがれ古びても模様だけはくっきり残ります。古くからの伝統工芸技術は行程の長さより現代では施されることが少なく希少なデコレーションになりつつあります。
オリジナルのツゲのペグにウォールナットの縁取り |
ニスはもちろん古流のオイルニス。アマーティ家の入魂作品に見られるオレンジ色のあかね顔料を使用し全体的に優しい色に仕上げています。
コンセプトは山吹色。装飾の木片それぞれの地の色がつぶれないようにしています。
完成したヴィオラは弦を張られ関東で奏でられています。コンサートホールで見かけたらしっかり聴いてみてくださいね
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